親知らずの抜歯経験を人に聞いてはいけない10の理由

エビデンス(医学的根拠)も半分くらいしか無い私見ですが。
患者さんの話を総合して、プラス心理学的な絡みで。

 

僕は患者さんに親知らずを抜く説明をした際、特に抜く親知らずの難易度が簡単な部類に入る場合、最近ちょっと躊躇している患者さんには

「他人に親知らずを抜いたときどうだったか、聞かないでください」

と説明を追加しています。難しい抜歯になるケースは特に何も言いません。

 

というのは、

  1. 親知らずの抜歯と言っても、上の親知らずと下の親知らずでは全く難易度が違う
  2. 上でも下でも生え方によって難易度が全く違う
  3. 男性女性、年齢によって難易度が違う。精神力も異なる
  4. 痛みの耐久値は人によって異なる。しかも心理的圧迫も含めると。
  5. 痛いだろう、腫れるだろう、という患者さんが描く術後の想定で、現実の後の感想が異なる
  6. 1~5の事を充分に把握して抜歯された患者さんはほとんどいない
  7. 当然、施術する先生のレベルでも術中術後が違う
  8. 難易度が低かったら当然のこと、難易度が高かった抜歯をされたとしても痛くなかったら、経験として記憶に残りにくい
  9. 何故か人は(過去のことと笑い飛ばせる程度の)辛かった自慢、痛かった自慢をしたがる、そして会話の波が広がっていく。
  10. 腫れた顔は衝撃的だけど、腫れてない顔は誰も何も言わないし気づきもしない

 

歯を抜くというのは、歯周病でプラップラじゃなければ、歯や骨をたわませて、スキマを作るようにして、引っかかりを少なくして抜く。ので、

1は上顎骨は下顎骨と比べ柔らかめで、また下顎骨は顎関節でつながっているだけでフリーなので、下の親知らずを抜くのに押されると顎がツライ。
基本的には上の親知らずを抜く方が簡単なのですが、横に生えている場合は下の方が簡単です。道具的角度的な意味合いで。
あとは顎関節症とかも左右されます。抜歯が痛いのか顎が痛いのか?

2はまっすぐに生えていたり斜めに生えていたり真横に生えて?いたり、根っこの形態が円錐形か二叉に張っているか鍵状になっているかなどで全く難易度が変わります。

3は骨の硬さや薄さ、弾力性で、男性より女性が、高齢より若年が骨は柔らかく弾力性があるので抜きやすい。が、女性は骨が薄いため壊れやすかったり、下顎管(でかい神経や血管の通路)が浅い位置にあるケースが多く親知らずと絡んできやすい。

4は当然人それぞれ。

5は、人に聞いて想定してしまった場合によくあるのですが、想定していたより痛くなかった(痛くないとは言ってない)、想定していたより腫れなかった(腫れてはいる)と、患者さんが設定したハードルによって感想が違ってしまいます。
逆に言うと、こっちが痛くなる可能性は低いですよ、とハードルを下げて抜歯に前向きにさせて、そのハードルより高い痛みを出させてしまうと・・・・・。

6はこっちは数多くのパターンの親知らずを抜いているけど、抜かれた本人は最大4本なのだから、自分がどんな親知らずなのかはともかく、他人とどう違うのかなんてわかるはずもありません。説明はするけども。

7はまぁ・・・・ね。僕も偉そうな口はききません。きけません。

8は過去に上の親知らずを抜いたことを患者さんに聞いたときに、骨の形態からほぼ確実に親知らずがあったはずの跡なのに、抜かれた経験が無い、と言う人が割と多く(本当に無かったのかもしれないけれど)、抜かれた記憶はあってもかなり曖昧になっているケースが多かったので。
下の大変そうな雰囲気の跡で親知らずの抜歯のことを聞くと上のそれと比べてかなり具体的に語る語る。

9は何ででしょうね。現在進行形や過去でも今に尾を引いている場合はあまり語りたがらないかもですが、完全に過去のことの場合は何故か不幸自慢し出すケースが多い気がします。

10は抜かれて腫れた場合、皆が心配しますが、腫れてもいない痛がった表情もしてないと、そもそも他人は抜かれたこと気づかないから話題にならない。

 

ということから、他人に親知らずの抜歯経験を聞くと、楽だったよ痛くなかったよという経験談より、痛かった腫れた血が止まらなかった、という経験談ばかりが増えていくので、勝手に恐怖心が増幅されるという心理学的陥穽に陥るわけですよ。

逆に、こっちが考えないといけないのは、初めての抜歯で辛い思いをさせてしまうと、簡単な上の抜歯もやらせてくれなくなるし、こちらも簡単だからと説得しづらいのです・・・最初が肝心・・・・うぅ・・・。

 

また・・・・・少し他の先生にケンカを売っている気もしますが・・・
僕からしたら、というか口腔外科の医局に数年所属した先生からしたら、新米口腔外科医が受け持つ程度の簡単な親知らずの抜歯なのに、
「前に通っていた先生からは『これは大学病院で無いと抜けないくらい大変だから』と言われた」
と、自分が親知らずを抜けない事が恥のように、隠すように、簡単な親知らずをさも大変なように言うのをやめて欲しい。

親知らずを抜ける抜けないは、先生の本当の治療技術とは関係ないことで、親知らずが抜けない=下手な歯科医師、では決して無いのだから、素直に「自分では抜けないから」と言えばいいのに。
なんで変なコンプレックスを出すのかなぁ。矯正治療が出来ないことは別に恥ずかしくないでしょ?と言いたい。